大切に本を胸に抱えご機嫌で帰ってくる最中、離宮に向かう小道の脇でメイド達が立ち話しているのに出くわした。
「今日で三回目よ」
「ええ。それも、全部アルフレッド殿下のほうからお誘いしているらしいわ。もう、セリーク公爵が大喜びだって、セリーク公爵家で働いている知り合いが言っていたわ」
「やっぱりベアトリス妃は側妃のままで、正妃はレティシア様なのかしら?」
ベアトリスは足を止める。レティシアとは確か、セリーク公爵令嬢の名前だ。
(アルフレッド殿下がセリーク公爵令嬢を呼び出しているの?)
アルフレッドが誰を呼び出そうがベアトリスがとやかく言うべき事ではないが、胸の内にモヤモヤしたものが広がっていくのを感じる。
ベアトリスは離宮に戻るとすぐに、錦鷹団の事務所にいたサミュエルのもとに向かった。
「サミュエル様。ジャン団長ってどちらに?」
「殿下? 今の時間は、予定されていた会合じゃないかな」
サミュエルはきょとんとした表情で、すぐに答えた。
「そうですか。ちなみにそれは、どんな用件でどなたと?」
「え?」



