「状況はわかった。引き続き、調査に当たってくれ」
「はい」
カインは頷くと、今度こそアルフレッドの執務室をあとにする。その後ろ姿を見送りながら、アルフレッドは椅子の背もたれに体を預けた。
自分の与り知らないところで何かが動いている、嫌な予感がしてならなかった。
◇ ◇ ◇
──アルフレッド殿下が新しい妃を迎える準備をしている。
ベアトリスがそんな噂話を聞いたのは、偶然だった。
その日は思ったより早く仕事が終わったので、王宮の敷地内にある国立図書館に本を借りに行ったのだ。
(えへへ。たくさん新刊が入荷されていたわ。早速読んで、時間が余ったら翻訳作業も──)
ベアトリスは本を入れた鞄を胸に抱え、顔を綻ばせる。
(最近は城下の本屋さんも行けないからなあ)
アルフレッドによると最近城下の治安が悪いそうで、あまり城下には行かないようにと言われてしまった。確かにここ最近城下に行くといつも何かしらのトラブルに遭遇するのでアルフレッドの言うことは嘘ではないのだろう。
アルフレッドは『欲しい物があるなら商人に持ってこさせるから言え』と言うけれど、ベアトリスは本を選ぶ醍醐味は本棚に並ぶ本の背表紙を眺めながら一期一会を楽しむことにこそあると思っている。
だから、国立図書館でこうして本を借りることができて今日は大満足だ。



