(しかし、先入観は捨てるべきだな)
この人がこんなことをするわけがないという先入観があると、物事の真実を見誤る可能性がある。今は〝ベアトリスが亡きあと、一番の妃候補はセリーク公爵令嬢である〟という事実だけを考えて客観視すべきだ。
「セリーク公爵令嬢を離宮に呼べ。探りを入れる」
「かしこまりました」
ランスとサミュエルは頷くと、すぐに手配に向かう。
その後ろ姿を見送ったあと、ジャンはカインがまだ部屋の片隅に残っていることに気付いた。
「カイン。どうした?」
不思議に思い問いかけると、カインは険しい表情をアルフレッドに向ける。
「実はずっと気になっていたことがあって──」
「なんだ。言ってみろ」
「ベアトリス妃の周辺で異変が起きたあと、いつも魔力の残痕のようなものを僅かに感じるんです」
「魔力の残痕? 誰か、魔力のある人間が魔道具を使って関与しているということか?」
アルフレッドはカインに問い返す。
魔力の残痕は、魔道具を使ったときに現れる。
しかし、魔道具を使えるのは魔力持ちの人間のみであり、魔力持ちの人間は極めて稀にしか生まれない。ここセルベス国で魔力持ちだと判明している人間は数えられるほどしかおらず、その全ては国に記録されている。
「そう思って独自に調査したのですが──」



