「護身の魔道具を付けているからいいものの、一歩間違えば死んでいたぞ」
「自体を重く見て馬の飼い主に事情を聞いたのですが、それまでは大人しかったのに、突然不機嫌になって暴れ出したと」
サミュエルがすかさず答える。
「周囲にあやしい者は?」
「ランスと一緒にすぐに探しましたが、いませんでした」
サミュエルが答えると、ランスもそれに同意するように頷く。
アルフレッドはその答えを聞き、眉間の皺を深くした。
「こんな状況では、ベアトリスが城下に行くのはしばらく禁止だ」
アルフレッドは深いため息を吐く。
「それでランス。以前に命じた調査はどうなっている?」
「洗い出しに全力を注いでいますが、まだ糸口を掴めていません」
ランスは緊張の面持ちで答える。
ベアトリスが度々危険に巻き込まれているのが人為的だとすれば、誰が何の目的でやっているのか?
寵妃であるベアトリスがいなくなればアルフレッドは必ず別の妃を娶る。そこに自分の娘を、と狙う貴族が糸を引く可能性があると睨んだアルフレッドは、すぐにその線で調査するようにランスに命じた。しかし、現時点で犯人と思しき人物は浮上していない。
「現時点で一番怪しいのは誰だ?」
「最も妃候補として有力視されている、セリーク公爵令嬢かと」
「セリーク公爵家か」
アルフレッドは、立派な口髭を蓄えたセリーク公爵の顔を思い浮かべる。何度も会ったことはあるし、仕事でも絡みがあるが、そのような恐ろしいことをする男には思えなかった。



