ベアトリスは、意外な話に驚いた。
「殿下、今も心配しているみたいなんだよね。既にベアトリスは側妃にしているとはいえ、これまでみたいにある日何か不幸に襲われるんじゃないかって」
「そうだったんですね……」
先ほどジャンに抱きしめられた際に言われた言葉がよみがえる。
『お前もいなくなるのかと思った』
かすれた声で、確かにそう言った。
「だから、気をつけて。殿下のためだと思ってさ」
「はい」
ベアトリスが頷くと、サミュエルはホッとしたような顔をして「じゃあ、僕はそろそろ帰るね」と手を振る。
(わたくしも、戻ろうかな)
その後ろ姿を見送ってから、ベアトリスは立ち上がる。すると、部屋の片隅でまだカインが仕事しているのが見えた。
(あ、そうだ)
ベアトリスはポケットに手を入れると、今日カインから借りた魔道具の指輪を取り出した。
「カインさん。これ、ありがとうございました」



