離宮に戻ったベアトリスは、そっとジャンのほうを窺い見る。
あのあと、ベアトリスはジャンによって捕まえられ、離宮にそのまま連れ帰られた。ジャンは、帰り道もほとんど口を開かず黙り込んだままだ。
(怒ってる? ものすごーく、怒ってる?)
この態度、そうとしか思えない。
そもそも、ベアトリスは城下に行きたいとジャンに申し出て、却下された。それを完全に無視して勝手に離宮を抜け出したのだから、ジャンが怒って当然だ。
(ど、どうしましょう……)
自分でも、浅はかな行動だったと思う。
ベアトリスはお飾りとはいえ、アルフレッドの寵妃なのだ。そんな自分に何かがあったら、大騒ぎになるのは目に見えていたのに。
「……ごめんなさい」
ベアトリスはぎゅっと手を握る。
大事にならなかったからよかったものの、一歩間違えば大変なことになっていた。
「ジャ──」
こちらを見てくれないジャンの腕に、ベアトリスは手を伸ばす。次の瞬間、力強く抱きしめられた。



