ベアトリスはこの場を立ち去ろうと、立ち上がる。
歩き出そうと足を踏み出したそのとき、「待てよ」と男がベアトリスの腕を掴んだ。その拍子に、持っていた本を入れた袋が地面に落ちる。落ちた拍子に、本が何冊か袋の中から外に飛び出した。
「あっ!」
ベアトリスは思わず声を上げる。
「買ったばかりの大切な本なのに!」
「本なんてどうでもいいだろ。そんな小難しいもん読んでないで、俺ともっと楽しいことをしようって言っているんだ」
「嫌だって言ったの」
男の手が再びベアトリスに伸びかけたそのとき、凍てついた、けれどベアトリスにとっては安心する声が響いた。
「おい。その女に触れるな」
そこには、男に短剣を突きつけるジャンがいた。
どうしてここに?という台詞は出てこなかった。
ジャンが、これまで一度も見たことがないくらい、凍てついた目で男を見ていたから。
明らかに騎士の格好をしたジャンの登場に、男は狼狽えたような様子を見せた。ジャンの背後から、走って追いかけて来たと思しきランスとサミュエルもやってくる。
「こいつを捕らえろ」
「はい」
サミュエルが頷き、男に縄をかける。



