俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?

 ◇ ◇ ◇


(寄り道したのは失敗だったわ)

 後悔したときにはもう遅かった。

 もう何カ月も王宮から出ていなかったので、久しぶりに自由に町歩きをしたのが嬉しくてついつい寄り道してしまった。
 少し喉の渇きを覚えてたまたま目に付いたオレンジスタンドでジュースを頼んだ。絞りたての新鮮ジュースを受けとって近くのベンチに座って飲んでいたところまでは良かったのだが、歓迎しない人が現れたのだ。

「俺と遊ぼうぜ」

 ベアトリスは男を見上げ、首を横に振る。

「いいえ、結構です」
「そんなこと言うなって。こんなところにひとりでいるなんて、遊び相手を探しているんだろ? 俺はこの辺りじゃちょっとした有名人なんだ」
「そうですか」

 ベアトリスは男を観察した。どこでどう有名なのかは知らないが、どうせ碌でもないことだろうと予想が付く。
 一見すると小綺麗な身なりをしているが、その喋り方や態度は傲慢で下品だ。舞踏会では一度も見たことがない顔なので、恐らく貴族ではなく、どこかの成金の息子だろう。

(同じ〝偉そう〟でも、アルフレッド殿下とは全然違うわね)

 人の品性や高潔さは、こういった些細な態度から滲み出るものなのだろう。

「わたくし、そろそろ戻らないとなりませんので」