「オレンジジュースか……」
ジャンはホッと息を吐き、剣の柄を握っていた手の力を抜く。
あの男に刺されるのではと警戒したのだが、ベアトリスがオレンジジュースを注文してそれをその場で作っているだけのようだ。
「団長、心配しすぎです。本屋に行って本を買ってくることなど、子供でもできます」
ランスが呆れたように、肩を竦める。
(確かに、心配しすぎだな)
自分でもどうにかしている。そう思ったそのとき、ベアトリスの前に影がかかったのが視界の端に映り、ジャンはハッとする。
見ると、ベンチに座ってジュースを飲んでいるベアトリスの前に、ひとりの男が立っていた。
ベアトリスは男を見上げ、何やら会話している。
(知り合いか? それにしては、様子がおかしいような……)
男の身なりから判断するに、ごろつきなどではなさそうに見える。ただし、ジャンは見覚えのない顔なので、高位貴族ではなさそうだ。
そうこうするうちにベアトリスが立ち上がる。男がベアトリスの肩に手を回そうとして、ベアトリスがそ
の手を叩く。
「あれ? 様子がおかしいですね」
サミュエルが訝しげにそう呟いたときには既に、ジャンはその場を飛び出していた。



