俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?


「嬉しそうですね」

 横にいたサミュエルがぽつりと零す。

「ああ、そうだな」

 物陰からベアトリスを見守っていたジャンは頷いた。

 以前に本をプレゼントしたときにも思ったが、ベアトリスは新しい本に出会うと、まるで宝物を見つけた子供のような顔を見せる。

「よっぽど本が好きなんでしょうね。マーガレットからも、ベアトリスが読んでいない本を見つけるほうが難しいと聞きました」
「そのようだな。言葉も、いろいろな国の本を書かれたそのままの言葉で読んでみたくて、勉強したと言っていた」

 話しながらも、ジャンは視線を本屋に向ける。両手にいっぱいの本を紙袋に入れて持っているベアトリスが、満足げな表情で店から出てくるのが見えた。

「あんなに買うのか?」

 ジャンは呆れたような声を漏らす。
 遠目なので正確な数はわからないが、十冊くらいはありそうに見えた。あれを持ち歩くのは、かなりの重いはずだ。

 店を出たベアトリスはメインストリートで左右を見て、しばらく考えるような仕草を見せてから馬車乗り場があるほうへと歩き始める。時々通り沿いに店を出す売り子の声に引き寄せられるように立ち止まっては、店の商品を見ていた。

「もう帰城するつもりのようですね」

 そう言ったのは、本日ジャンに同行しているもうひとりの側近──ランスだ。