◇ ◇ ◇
物陰からそっと、本屋の様子を見る。周囲を窺うように一度だけ周りを見回した黒髪の女性──ベアトリスは本屋の中へと消えた。
メインストリートに面した大きなガラス窓越しに、店主と思しき初老の男性と何かを話しているベアトリスの姿が見えた。会話を終えたベアトリスは本棚を眺める。すぐに一冊を本棚から抜き手に取り、中身をぱらぱらと眺める。そしてその本をまた本棚に戻すと、別の本を手に取った。
店主がベアトリスに声をかける。片手には一冊の本を持っていた。ベアトリスはそれを受け取ってしげしげと眺める。その表情に喜色が浮かぶのが目に見えた。
「こっちの気も知らないで──」
ジャンはチッと舌打ちする。
錦鷹団の団長室で仕事をしていたら、サミュエルからベアトリスが見当たらないと報告を受けた。どこに行ったのかと探し回った結果、カインから『魔道具を貸してくれと言われたので渡した』と聞き出し、慌てて城下に探しに来た。
今日の午前中、ベアトリスから『城下に本を買いに行きたい』と聞いていたのですぐにここではないかとピンときたのだが、その予想は見事に的中した。
ベアトリスにはある日突然〝お飾り側妃〟を命じた。彼女には悪いことをしたとは思っている。忙しい任務の合間に、城下くらい自由に行かせてやりたいとも。
だが、これまでの婚約者候補の事件や、先日のビショップ子爵令嬢の不可解な事件などを考えるともう少し対策を練ってから、と思っていた。
物陰からそっと、本屋の様子を見る。周囲を窺うように一度だけ周りを見回した黒髪の女性──ベアトリスは本屋の中へと消えた。
メインストリートに面した大きなガラス窓越しに、店主と思しき初老の男性と何かを話しているベアトリスの姿が見えた。会話を終えたベアトリスは本棚を眺める。すぐに一冊を本棚から抜き手に取り、中身をぱらぱらと眺める。そしてその本をまた本棚に戻すと、別の本を手に取った。
店主がベアトリスに声をかける。片手には一冊の本を持っていた。ベアトリスはそれを受け取ってしげしげと眺める。その表情に喜色が浮かぶのが目に見えた。
「こっちの気も知らないで──」
ジャンはチッと舌打ちする。
錦鷹団の団長室で仕事をしていたら、サミュエルからベアトリスが見当たらないと報告を受けた。どこに行ったのかと探し回った結果、カインから『魔道具を貸してくれと言われたので渡した』と聞き出し、慌てて城下に探しに来た。
今日の午前中、ベアトリスから『城下に本を買いに行きたい』と聞いていたのですぐにここではないかとピンときたのだが、その予想は見事に的中した。
ベアトリスにはある日突然〝お飾り側妃〟を命じた。彼女には悪いことをしたとは思っている。忙しい任務の合間に、城下くらい自由に行かせてやりたいとも。
だが、これまでの婚約者候補の事件や、先日のビショップ子爵令嬢の不可解な事件などを考えるともう少し対策を練ってから、と思っていた。



