俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?


 ルーモアは、ベアトリスの妃教育の指導をしてくれている女性だ。主に、セルベス国の成り立ちや歴史についての講義を担当している。いつもは髪の毛をひとつに纏めてお団子にしたスタイルなのだが、今日は薄茶色の髪の毛を下ろしていつもと違う雰囲気に見えた。

 隣にいるのは恋人だろうか。中年の渋みのある男性がエスコートしている。髪を下ろしているだけなのに、普段の家庭教師然とした雰囲気より、だいぶ華やかに見えた。

 知っている人の普段とは少し違う姿についつい見ていると、彼女が視線をベアトリスに向けてばちっと目が合った。

「ごきげんよう、ルーモア先生」

 ベアトリスは咄嗟にお辞儀をする。

「ごきげんよう。……どこかで私の講義を聞いたことが?」

 ルーモアは不思議そうに小首を傾げた。その様子を見て、ハッとした。

(そっか。姿が──)

 ルーモアのこの反応を見る限り、どうやら無事に姿を変えることができているようだ。

「いえ。ただ、友人がルーモア先生の講義を聴いたことがあるので一方的に存じ上げておりました」
「まあ、そうなのね」

 ルーモアは納得したようで、口元に微笑みを浮かべた。
 一言二言の言葉を交わし、立ち去ったルーモアの後ろ姿を見つめ、ベアトリスは興奮した。