「何の騒ぎなの?」
「コーベット伯爵令嬢がビショップ子爵令嬢に意地悪をしていたことを咎められて、婚約破棄されたそうよ」
「まあっ!」
わざと聞こえるようにいっているのか、それとも悪気なしなのか、ひそひそと話す来賓客達の会話はベアトリスまで筒抜けだ。
(そんなこと、やるわけがないでしょ!)
しかし、今ここで反論するのは悪手だ。醜聞を広げるだけで、何の得にもならない。非常に不本意ではあるが、ここは大人しく引き下がって後日抗議するのが得策だろう。
(ああ、もう! 最低っ!)
ベアトリスはぎゅっと目を瞑る。
「きゃっ!」
前をよく見ていなかったせいで廊下の正面から歩いて来る人にぶつかってしまった。突然襲ってきた衝撃にベアトリスは悲鳴を上げる。
弾みで尻餅をついたベアトリスは、慌てて立ち上がろうとする。
「悪い。大丈夫か?」
スッと目の前に手が差し出された。



