思っても見なかった事実に、ベアトリスは衝撃を受けた。
(これまでに婚約目前だった方が、三人も?)
王太子であるアルフレッドがこの歳まで独身でいたことを、ベアトリスも不思議には思っていた。けれど、そんなことが起きていたなんて想像すらしていなかった。
(もしかして、だからわざわざ多くの貴族がいる舞踏会で初対面のわたくしに対してあんなパフォーマンスをして見せたのかしら?)
アルフレッドがベアトリスに最初に接触を図ったのは、バトラー公爵家主宰の舞踏会だった。バトラー公爵家は王室の覚えもめでたい名門公爵家。セルベス国の主要貴族は全員参加している。
そこでああいう行為をすれば、婚約発表をしなくともベアトリスがアルフレッドから妃に望まれていることは一気に知れ渡り、公然の事実になる。事実、ベアトリスはそのままあれよあれよという間に彼の側妃になった。
ベアトリスの指には、アルフレッドから贈られた護身の指輪が嵌まっている。
(わたくしにも何かあるんじゃないかって、彼なりに心配していたのね)
ベアトリスは膝の上に置いていた手をぎゅっと握る。
「だから、今日こうしてベアトリス様とお茶を楽しみながらお話ができていること、本当に嬉しいのよ」
シセルはベアトリスを見つめ、朗らかに笑った。
「そうだったんですね……」
ベアトリスはシセルに微笑み返す。
ベアトリスはあくまでもお飾りの側妃だ。純粋に喜んでいるこの人を騙している気がして、胸に痛みを感じた。



