(でも、そんなことはどうでもいいわ)
彼が何者であろうと、ローラの望みが叶うならそれでいい。
「話を聞くだけなら、よくってよ」
ローラは腕輪を受け取り、それを自分の右腕に嵌める。
男の口の端が、にんまりと上がった。
◇ ◇ ◇
それは、王宮舞踏会から一週間ほどしたある日のことだった。
サミュエルから手渡された手紙を見て、ベアトリスは目を瞬かせる。
「なぜこんなものが、わたくしに?」
「そりゃあ、殿下の寵妃だからじゃないかな?」
「お飾りですけど!?」
ベアトリスが焦ったのには理由がある。なんと、アルフレッドの母であるシセル王妃から【今日の午後、ゆっくりふたりでお茶でもしましょう】と招待状が届いたのだ。
(わたくしが王妃様とふたりでお茶? あり得ないでしょ!)
ベアトリスは時期が来ればここを去る身。王妃様とお茶だなんて、恐れ多くて無理だ。
「わたくし、お腹の調子が──」
「行くってもう返事しておいたよ。団長が、その時間は仕事しなくていいって」
「なんで!」
ベアトリスは思わず手に力を入れる。その拍子に、招待状の紙がぐしゃりと潰れた。
ジャンはベアトリスがお飾り妃であることを誰よりもよく知っているはずなのに。



