その男に出会ったのは、王宮の出口にほど近い人気のない開放廊下を歩いているときだった。
「ひどい顔だな。嫉妬にまみれている」
突如現れた見知らぬ男にそう言われ、ローラはカッとする。
「なんですって!」
王宮で働く文官だろうか。長く茶色い髪に、黒い瞳。年齢は三十過ぎ位に見えるが、目元にくまがあり陰鬱な印象の男だった。ローラは知らないので、少なくとも高位貴族ではない。
「お前の願いを叶える手助けをしてやろうか?」
「え?」
ローラは訝しげに、男を見返す。
「ベアトリス=コーベットが王太子の寵愛を得ているのが面白くないのだろう? 王宮舞踏会で婚約者を奪ってやったのに、なぜあの女が自分よりいい男をつかまえたのかと。負けたような気がしている」
「そ、そんなことはっ」
考えていることをあっさりと言い当てられ、ローラは狼狽する。
「お前に、これをやろう」
男はローラに、腕輪を差し出した。銀製で、青色の石が数個嵌まっている。
回廊の照明に照らされ、腕輪は鈍く光っていた。



