立ち尽くしたまま黙り込んでいると、隣に立つブルーノが心配そうに顔をのぞき込んできた。
普段だったら可愛い笑顔を浮かべて微笑み返すところだけれど、今はそれすら煩わしく感じた。
「なんでもないわ」
ローラは首を横に振る。
「そう? それにしても、ベアティのやつ本当に寵妃になったんだな」
驚いたようにいうブルーノの呑気な態度に、苛立ちが募る。
(こんなことなら、最初っからアルフレッド殿下狙いでいくべきだったわ)
そうすれば、あの見目麗しい王太子の隣に立ち、皆から傅かれて羨望の的になっていたのは自分だったかもしれないのに。
ベアトリスなんかに、自分が負けるはずがない。
「……体調が優れないので帰るわ」
「え? 大丈夫か? 送るよ」
「ひとりで帰れるから結構よ」
今はとにかくひとりになりたかった。脳天気な顔であれこれ話しかけられると、怒りを爆発させてしまいそうだったから。
ローラはくるりと体の向きを変えると、「おいっ、ローラ!」と呼び止めようとするブルーノを無視して王宮の出口に向かって歩き始めた。



