セリーク公爵令嬢の目が大きく見開き、がっかりとしたような顔になる。
それで、セリーク公爵がアルフレッドに娘を紹介し、セリーク公爵令嬢もあわよくばダンスを踊りたいと思っていたのに、アルフレッドがそれを断ったのだと悟った。
「よかったのですか? セリーク公爵令嬢と言えば、最近話題になっている社交界の花ですよ?」
ベアトリスは驚いて、アルフレッドを見上げて小声で聞く。あの若さと美貌で、身分は公爵令嬢。間違いなく、アルフレッドの妃候補のひとりのはずだ。
「そうなのか? 生憎俺のところに、その噂は届いていないな」
アルフレッドは全く興味なさげに首を振るとベアトリスの耳元に口を寄せる。
「じっとこちらを見ていたな」
「たまたま目に入ったのです」
「そうか」
くくっと笑いを漏らすような声が聞こえ、耳に柔らかく温かいものが触れる。アルフレッドがベアトリスの耳にキスをしたのだ。
「なっ!」
びっくりしたベアトリスは耳に手を当て、アルフレッドを見上げる。
「すぐに拗ねる子猫がいるから、他の令嬢の相手は難しいな」
「拗ねていません!」
「お、ついに自分が子猫だと認めたのか」
口の端を上げたアルフレッドを見て、しまったと思った。
「……もうっ!」
「ははっ」



