「この度は、おめでとうございます」
「ありがとう」
「実は私、アルフレッド殿下が幼い頃に一時期世話役を仰せつかりまして」
「まあ、そうなのですね」
王子の教育係に重用されている貴族が任命されることは、珍しいことではない。ディクシー卿も、何人かいる教育係のひとりだったのだろう。
「殿下はどんなお子様だったのですか?」
「非常に聡く、将来が楽しみなお方でした。さぞかし優秀な王族になるだろうと確信はしておりましたが、そのとおりご立派になられて──」
目を細めて懐かしそうに語るディクシー卿は、まるで我が子について語る親のようにすら見えて微笑ましく見える。
「殿下はこれまで、婚約者候補になられた方があのようなことになってばかりだったので──。今回、ベアトリス妃を迎えられたことが本当に嬉しいのです」
「あの……、あのようなことって?」
さっき、マーガレットも同じようなことを口走っていた。あのようなこととはどんなことだろうか?
ベアトリスが聞き返そうとしたそのとき、周囲がざわりとした。
はっとして喧噪の方向を見ると、アルフレッドがこちらに向かって移動しようとしている。その周囲には彼と話したいと望む人々が群がっていた。
「すごい人だわ……」
「そりゃあ、殿下は次期国王だからね」
思わず漏らした言葉に、サミュエルが応える。



