(本当に、見れば見るほど素敵なドレスよね)
ベアトリスが何も知らずに今の自分の立場の女性を見たら、マーガレットと同じように〝とても寵愛されている〟と思っただろう。
けれど、ベアトリスは契約によるお飾り側妃なので正妃になることはない。これはそれを周囲に悟らせないようにするための作戦であり、彼がいつか正妃を迎えたらベアトリスはこの役目を解任される。
(……ん?)
僅かにチクンっと胸の痛みを感じ、ベアトリスは自分の胸に手を当てる。
「それにしても、本当によかったってうちのお父様も喜んでいるのよ。ほら、アルフレッド殿下はこれまで、婚約者候補の方が次々とあれだったでしょう?」
マーガレットが声のトーンを落とし、ベアトリスに耳打ちする。
「……あれ?」
あれとは何のことだろうか。
聞き返そうとしたそのとき、マーガレットが大広間の中央のほうを見て表情を明るくした。
「あ、サミュエル様が戻っていらしたわ」
マーガレットの声で、ベアトリスは顔を上げる。マーガレットは大広間の一角に目を見つめていた。
マーガレットもそちらに目を向けると、錦鷹団の団員であるサミュエルとランスがふたりでこちらに歩いてくるのが見えた。
サミュエルはマーガレットの姿を見つけると、柔らかな甘い笑みを浮かべる。
「マーガレット。ベアトリス妃と一緒にいたんだね」
「ええ。ちょうどさっき、ばったりと会ったの。ドレスがアルフレッド殿下そのもので、とても寵愛されているようで安心したって話していたのよ」
マーガレットはにこにこしながらサミュエルに説明する。



