俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?


 南部地方特産のブドウを使った果実酒を受け取り、一口飲む。アルフレッドがいた方向を振り返ると、辺境伯と並んで話し込む彼の周囲には多くの貴族達が集まっていた。
 皆、未来の国王に一言だけでも話すチャンスを得たいと頃合いを窺っているのだ。

「もうちょっと、時間を潰したほうがいいかしら?」

 グラスを片手に周囲を見回していると「ベアティ!」とベアトリスを呼ぶ声がした。声のほうを見ると、そこには頬を上気させた友人のマーガレットが立っていた。

「まあ、マーガレット! 久しぶりね。なかなか連絡できなくてごめんなさい」

 ベアトリスは久しぶりに会うマーガレットの姿に、表情を綻ばせる。

「ううん、平気よ。サミュエル様から、アルフレッド殿下がベアティを寵愛して全然離さないって聞いているから」
「へ!?」

 はっきり言うと、それはだいぶ間違った情報だ。寵愛して全然離さないのではなくて、こき使って全く自由な時間がないのだ。

「ねえ、ベアティ。今着ているこのドレス、もしかしてアルフレッド殿下からの贈り物?」
「え? ええ」
「やっぱり! 色合いがアルフレッド殿下そのものだもの。本当に寵愛されているわね。正妃になるのも時間の問題だわ」

 マーガレットは嬉々としてベアトリスのドレスを褒める。

「それはどうかしら……」

 ベアトリスは言葉を濁し、笑って誤魔化す。
 ふと、視界に自分の着ている豪奢な薄紫色のドレスの裾が映った。