俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?


 苦い記憶を思い出して気持ちが沈んだそのとき、ぐいっと体を引き寄せられる。
 アルフレッドの手が腰に添えられ、ふたりの距離がこれまでになく密着した。目線を上げると、薄紫色の瞳と視線が絡む。
 まっすぐに自分を見つめるその眼差しに、ドキンと胸が跳ねる。

「俺が目の前にいながら上の空とは、いい度胸だな。ベアティ」
「上の空だなんて。ちょっと考え事をしていただけです」
「それを上の空という」
「ダンスは久しぶりなので、上手く踊れるかと──」
「俺が目の前にいるときは、俺のことだけを考えろ」
「は?」

 呆気にとられてベアトリスが唖然とした顔を仕掛けたそのとき、曲が始まった。

 ぐいっと力強くリードされる。体が自然に動き、足を踏み出す。それに合わせ、ふわりとドレスの裾が揺れた。

「なかなか上手いじゃないか」

 器用に右眉を上げるアルフレッドをベアトリスは見上げる。

「それは、どうも」

 ベアトリスは口ごもる。
 ベアトリスが上手いのではなく、アルフレッドのリードが上手いのだ。踊った瞬間に、ブルーノと踊るときとは全く違うと感じた。

(踊る相手によって、こんなに違うのね)