一歩踏み出すたびに、次から次へと皆が頭を垂れて挨拶をする。
偽りの側妃だと見抜かれるのではないかとひやひやしながら愛想笑いを浮かべるベアトリスに対し、アルフレッドは慣れたもので、堂々とした態度だった。
「ベアティ」
「はい?」
名前を呼ばれ、ベアトリスは横に立つアルフレッドを見上げる。
「踊るぞ」
会場には、ゆったりとしたオーケストラの調べが流れていた。
「あ、はい」
王宮舞踏会は王族から踊るのがマナーだ。
(上手く踊れるかしら?)
最後に踊ったのはいつだっただろう。確か、一年前の王宮舞踏会だった気がする。
そのときは元婚約者であるブルーノと参加して、一曲だけ一緒に踊った。
(そういえば、あのあとブルーノはローラと踊っていたような)
今思い返せば、一年前から既にその後に続くふたりの関係性を示唆するような変化は見えていた。けれど、ベアトリスは自分の婚約者と友人が仲良くなることに対して好意的に捉えており、全く疑問を覚えていなかったのだ。
(とんだ間抜けだと思われていたでしょうね)



