ふと、額に優しく手を重ねられるのを感じ、ベアトリスはうっすらと目を開ける。
どれくらい眠っていたのだろう。さっきまで明るかった室内は、既に薄暗くなっていた。
「目覚めたか?」
聞き覚えのある低い声に、ベアトリスは横になったまま額の手の主を見上げようとした。しかし、それより先に体に強い衝撃を感じる。アルフレッドがベアトリスをぎゅっと抱きしめたのだ。
ベアトリスは驚いた。アルフレッドがベアトリスを抱きしめたことなど、今まで一度もなかったから。
「アルフレッド殿下?」
ベアトリスはアルフレッドの背中に手を回し、トントンと叩く。
「……お前に何もなくてよかった。体調に問題はないか?」
「大丈夫です。心配していただき、ありがとうございます」
まさかこんなに心配してくれるとは思っていなかった。
ベアトリスはゆっくりと上半身を起こすと、アルフレッドを見つめる。きっと、とても心配してくれていたのだろうと感じた。
「妃の心配をするのは当然だ」
「でも──」
お飾りの妃ですけれどねと言いかけて、さすがに可愛げがないので言うのをやめた。
「お陰様でどこも悪くありません」
さきほどまで残っていた頭痛も、今はすっかりなくなっていた。アルフレッドはそれを聞き、ほっとしたような表情を浮かべる。



