(夢じゃなかった)
ベアトリスは両手で顔を覆う。
バロー伯爵の部屋にひとりで忍び込んで返り討ちに遭いそうになり、駆けつけたジャン団長に助けられた。
(ジャン団長がアルフレッド殿下だったのね)
今まで、全く気が付かなかった。
けれど、そうとわかればサミュエルがベアトリスが『アルフレッド殿下が全然来ない』と文句を言っていたときに苦笑いしていた理由もわかる。それに、ジャンの家名であるラマール家が貴族年鑑に載っていないことにも合点がいく。
「こちらをお飲みください」
「うん、ありがとう」
ベアトリスはソフィアが差し出した飲み物を一気に飲み干す。喉の奥を冷たいものが抜ける感覚がして、生き返るような気分だ。
(薬のせいかしら? 頭がまだ重いわ)
ベッドサイドのデスクには、ベアトリスが使っていた姿を消すための目眩ましのケープが綺麗に畳んでおいてあるのが見えた。
(少しだけ、横になろう)
ベアトリスはもう一度、枕に頭を置く。
いつの間にか、意識はまた闇に呑まれていた。



