そう言おうと思ったのに、その言葉は最後まで出てこなかった。
ふわーっと視界が暗くなり、意識が遠ざかる。
「おいっ! ベアトリス! ベアティ!」
最後に見えたのは、いつも偉そうな態度のアルフレッドが珍しく焦ったような顔をした姿だった。
◇ ◇ ◇
ふと目を覚ますと、見慣れた木製の天蓋見えた。全体に彫刻がされた豪華な天蓋は、ベアトリスが離宮で使っているベッドに付けられたものだ。
「あれ? わたくし……」
ベアトリスは一体どうしてここにいるのだろうと、自分の記憶をたぐり寄せる。両手を上にかざすと、アルフレッドに貰った指輪が指に嵌まっているのが見えた。
指越しに天蓋を眺めていると、「お嬢様!」と声がした。
「よかった。気付かれたのですね!」
ソフィアはベアトリスの枕元に駆け寄る。
心配してくれたのか、その瞳は薄らと濡れていた。
「ソフィア? わたくし、どうしてここに?」
ベアトリスは枕元に立つソフィアを見上げる。
「王宮内をひとりで散歩中に体調を崩されて倒れられたと聞きました。ここへは、たまたま現場に居合わせたアルフレッド殿下が運んできてくださったのですよ」
「王宮内をひとりで散歩中に──」
散歩なんてした覚えはないから、アルフレッドがそう言い訳をしてくれたのだろう。



