「なんだ、お前は。誰の許可を得てこの部屋に入ってきた。どこの騎士団か、名を名乗れ!」
バロー伯爵は憤慨し、ジャンに抗議をする。
「許可? 許可などとっていない。なぜなら、俺には許可など必要ないからだ」
平常運転の不遜な態度でそう言い切ると、ジャンは鼻で笑う。
「それで、これはどういうことだ。バロー伯爵? 王族の公書偽造は最低でも無期懲役だぞ」
「私は偽造などしていない。アルフレッド殿下から全面的な支援をいただいたのだ!」
「だから、先ほど言ったことが聞こえなかったのか? 俺はお前に何かの権利を与えた記憶はない」
怒りに顔を赤くするバロー伯爵に対し、ジャンは目を眇める。
「この姿だったら、わかるか?」
耳に付けていたピアスのひとつを、ジャンが外す。ジャンの周囲に白いもやががかかり、数秒後にしっかりと輪郭を表したその姿を見てベアトリスは驚いた。
「これは……アルフレッド殿下」
バロー伯爵がかすれた声が部屋に響いた。
「幻術の魔道具だ。アルフレッド本人である俺が言っているのだから、間違いはない。俺はお前に何の権利も与えていない」
「それは……」
バロー伯爵は狼狽えて言葉に詰まり、自分の周囲を見回す。そして、すぐ傍らに座り込むベアトリスの存在に気付くと、しめたと言いたげな表情をした。



