「バロー卿。今さっきあなたの部屋から、アルフレッド王太子殿下が希少動物の輸入を許可したという許可証を発見しました。これ、偽造よね?」
「なっ! 人の部屋に勝手に入り、書類を漁るとはどういうおつもりですか! いくら妃殿下とはいえ、こんなことが許されると思っておられるのですか!」
「今は、わたくしが質問したのよ。これは偽造よね?」
だいぶぶっ飛んだ行動をしている自覚はある。
しかし、ここで「変なこと言って、ごめんなさい……」などとしおらしい態度を取ろうものなら、部屋を追い出されて証拠品を全て捨てられてしまう。
全く悪びれる様子のないベアトリスの様子に、バロー伯爵は不愉快げに眉をひそめる。
「妃殿下は勘違いしていらっしゃる。それは偽造ではありません。私は、アルフレッド殿下から全面的な支援をいただいているのです」
「嘘だわ。そんな話、聞いたことないもの」
「嘘ではありません。そもそも妃殿下がアルフレッド殿下と知り合ってからどれくらい経ちます? 殿下が留学から戻ってこられたあと、せいぜい半年でしょう? 私はそれよりもずっと長く殿下と知り合いなのです」
バロー伯爵はそう言うと、ゆっくりと部屋を移動する。執務机のうしろにあるキャビネットの前に立つと、中から青色のボトルを取りだした。
(飲み物でも飲むのかしら?)
ベアトリスもベアトリスだが、バロー伯爵もだいぶ肝が据わった男だ。
この状況で呑気に飲み物を飲もうと用意し始めるなんて!
ベアトリスはその様子をじっと見守る。
バロー伯爵はボトルを傾けて、グラスに中の液体を注いだ。少しだけ黄色いその液体は、水ではなく酒かもしれない。
「いかがです?」
「結構よ」
ベアトリスは首を横に振る。喉は全く渇いていない。
「それは残念だ」
バロー伯爵は眉尻を下げると、ポケットからハンカチを取り出す。そして、グラスを傾けるとハンカチにそれを垂らした。
「何を──」



