途端に狼狽えた様子のバロー伯爵が部屋の出口に向かって足早に近づく。そのとき、同じく出口の方向に移動していたベアトリスにぶつかり、バロー伯爵は勢いよく転んだ。
「痛っ!」
ベアトリスはぶつかられた足を摩る。
一方、「ぐっ」と声を上げて倒れたバロー伯爵は何に躓いたのかと自分の足元を振り返る。そして、大きく目を見開いた。
「なっ。一体どこから! 突然どういうことだっ!」
バロー伯爵の驚愕の視線が明らかに自分に向いていることに気付き、ベアトリスは目を瞬かせる。
(え? なんで気付かれたのかしら?)
そして、自分の姿を見てその理由にすぐに気付いた。
(目眩ましのケープが!)
バロー伯爵がぶつかった際に、足を引っかけたのだろう。ケーブが半分ぐらい、体からずり落ちていた。これでは、すぐに見つかってしまうのも当たり前だ。
(ええい。こうなったら、開き直るしかないわ!)
騒がれても、こちらは腐っても王太子の寵妃。
なんとかなる! ……はず。
ベアトリスは全く悪びれる様子を一切見せずにすっくと立ち上がるとコホンと咳払いをする。
明らかにベアトリスが不法侵入した側なのだが、堂々たる態度でビシッと先ほど盗んだ書類をバロー伯爵に突きつけた。



