先日の麻薬取引の際の許可証と、今の希少動物の輸入許可証。対象は違っているけれど、本来であれば犯罪であるとされる行為を王太子であるアルフレッドが許可したという点は共通している。
(どういうこと? もしかして、偽造?)
王族の公文書を偽造するなど、重犯罪だ。もし本当に偽造だとしたら、バロー伯爵は重刑を免れないだろう。
そのとき、カチャッと部屋のドアノブが回る音がした。
(いけないっ!)
集中していたせいで、足音に気がつかないなんて。迂闊だったと、己を呪う。
(逃げないと)
ベアトリスは書類の束はそのままに、目眩ましのケープを深く被る。気付かれないように、そろりそろりと出口に向かって移動し始めた。
「全く、あの女! 一体どこからあんな情報を……ん?」
部屋に入るなり憎々しげにそう吐き捨てたバロー伯爵の動きが止まる。その視線は、ベアトリスが先ほど本棚から出して床に置いたままにしてある書類の束に向いていた。
「なぜこんなところに書類が?」
バロー伯爵はつかつかと本棚の方に歩み寄り、書類の束を拾い上げる。そして、それを取り出したであろうとすぐにわかる本棚の空洞と自分の手元の書類の束を見比べて眉根を寄せた。
「まさかっ、誰か勝手にこの部屋に!?」



