どちらもあり得る。だが、いつバロー伯爵がもどってくるかわからないこの状況ではゆっくり捜している時間はない。
ベアトリスはまず、さっさと確認が終わりそうな机の中を見ることにした。引き出しを引くと、意外なことに鍵はかかっていない。棚の中には雑多に筆記用具や白紙の便箋が入っていた。素早く目を通すが、関係しそうなものは何もない。
「となると、やっぱり本棚かしら」
ベアトリスは壁の一面を覆う本棚を見る。これを全部確認するのは至難の業だ。
とりあえずひと束、書類を引き抜いてみた。中身はマルカン地方の伝統料理地ついて書かれたものだった。つまり、全く関係がない。
ベアトリスは根気よく本を引き抜いてはパラパラと捲る。ようやく四段目の書類の一部を引き抜いたとき、はたと手を止めた。
「これ……」
それは、法律で勝手な取引が禁止されているセルベス国の希少な動物の輸入を、特別に全面許可するという許可証だった。許可者の欄にはアルフレッド王太子名が入り、印も押されている。
(アルフレッド殿下が希少動物の輸入を全面的に許可?)
見てすぐに、強い違和感を抱いた。
法律で取引を禁止されている希少動物を輸入すれば、通常であれば犯罪とされる。
アルフレッドがこんな許可証を出すはずがない。
それに、違和感を抱いた理由はもうひとつ──。
「これって、今回と全く同じケースね……」



