俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?


 目的のフード付きケープは、一番端っこにかかっていた。
 先日カイルから貰った、目眩ましの魔道具だ。

 ベアトリスはそれをハンガーから下ろすと、自分の体に纏う。頭から足まですっぽり隠れるように被って姿見の前に立った。

「うん。これなら、気付かれないはずよね」

 姿見には、ベアトリスの背後にある壁が映っていた。魔道具の効果が上手く発揮されて、姿が見えなくなっているのだ。

 ベアトリスはそれを着たまま、もう一度先ほど訪れたバロー伯爵の部屋へと向かった。

(誰もいないかしら?)

 ドアに片耳を押し当てて、じっと耳を澄ます。中からは、何も物音がしなかった。そっと解錠の魔道具をそっとドアノブにかざすと、それはカチャッと小さな音を立てて回った。

(よし、成功!)

 ベアトリスの推測では、バロー伯爵はかの人身売買事件について、なんらかのことを知っている。だから、ベアトリスに先ほどのようなこと尋ねられ、誰かしらに急いで状況の確認を行うはずだと予想した。

 かぶっていた目くらましの布を深く被り直し、そっと部屋のドアを開ける。部屋の中は蝋燭の明かりに照らされ薄暗かった。

 壁の片側にはぎっしりと本や書類の収納された本棚が、反対側には風景画が飾られている。中央には大きな執務机があり、いくつかの書類が積み重なっていた。

(人身売買に関する書類を隠すとしたら、どこかしら?)

 自身がバロー伯爵になった気分で考えてみる。当然、目立つところには置かないはずだ。

「木を隠すなら森の中ってことで、本棚? それとも、鍵のかかる机の中……」