「バロー伯爵について、至急調べてください。何か怪しい動きはないか、見張ってほしいんです」
「バロー伯爵について?」
ふたりは顔を見合わせる。
「どういうことが説明してもらえるかな? 話が見えてこない」
「先日の事件なのだけど、あの屋敷にいた人達はマルカン地方の言葉の訛りがあったわ。だから、マルカン地方出身の人が関わっていると睨んで、バロー伯爵に何か知っていることはないかと聞いて協力を仰いだのだけれど、どうも反応がおかしかったの。何かを誤魔化そうとしているような……。だから、彼が関わっているとすれば何か怪しい動きをするのではないかと思ったのよ」
「ちょっと待った!」
サミュエルは片手を上げてベアトリスの話を遮る。
「聞いたって、ベアトリス自ら?」
「もちろん、そうよ」
ベアトリスが頷くと、サミュエルは目をまん丸にする。
「妃殿下が突然訪問なんて、それはバロー伯爵も驚いただろうね」
サミュエルが両手を挙げてランスを見る。ランスはその視線を受け、肩をすくめた。
そんな、ふたりしてベアトリスが無鉄砲だとでも言いたげな態度をとるなんて不本意だ。
「とにかく、バロー伯爵が何かの動きを見せるかもしれないとわたくしは睨んでいるの。警戒を頼める?」
「話はわかったよ。団長が戻ってきたら、団長にも報告しておく」
「ええ、ありがとう」
ベアトリスは伝えるべきことを伝えると、一旦自分の私室へと向かった。
まっすぐにクローゼットに向かい両開きの扉を開け放つと、かかっている洋服を順番に見る。
「あったわ。これよ!」



