推し作家様、連載中につき。

「知り合いなの。残念ながら名高は私じゃないけど」

「え……」

「まさかこんな近くに、名高を熱狂的に応援する人がいるなんて思わなかったから、びっくりしただけ。本当に、それだけ」



 推理、大外れ。

 探偵の世界に生まれなくてよかったよ本当に。

 ヘボ探偵でのたれ死んでたよきっと。


「なんだよ探偵の世界って」

「……っ!? 水谷くん、いま心読んだでしょ! エスパーなの?」

「違うよ。なんとなく、そう思ってそうだなって」


 ははっと満面の笑みを浮かべる水谷くん。

 そんな水谷くんと、私の顔を交互に見た羽花ちゃんは、「案外お似合いかもね」とぼやいて、引き出しからノートを取り出した。


「それっ、ネタ帳!?」

「ただの部活のノート。名高は私じゃないって言ったでしょ。これ、忘れたから取りにきただけなのに、変な疑いかけられてさんざんよ。じゃあね」


 ひと息で言い切ると、羽花ちゃんは身を翻してスタスタと去っていった。