そんな葛藤に悶える私にクスリと笑った水谷くんは、「朝乃ってほんと面白いな」と呟いて、こちらに近づいてきた。
トン、トンと小さな音が床に響く。
目の前に来るとやっぱり背の高い水谷くん。
少しだけ見上げるようにしないと、どんな顔をしているのかわからない。
「だからびっくりしたよ。朝乃がキャラ設定の紙持ってたから、もしかしたら朝乃が名高先生なんじゃないか、って思ってさ」
「じゃあ私たち、同じこと思ってたってこと?」
「そうみたい、だね」
ははっ、と苦笑いを浮かべる水谷くんは、「その紙、どこから入手したの? 自作?」と首を傾げた。
それで私は、ヒラヒラと紙が落ちてきてから今までに至った経緯を話してみた。
しばらく腕を組んで考えるそぶりをしていた水谷くんは、「あやしいな」と呟く。
「なにが?」
「この紙、田中にも見せたんだよね」
「羽花ちゃん? うん。見せたよ」
「そのときの反応は? 何かおかしなところなかったの」
「別に? 呆れてたと思うけど」
特に変な反応はしなかったはず。
いやでも……まって。
私が、名高先生の名前を出した瞬間、その一瞬だけだったけれど。
「ああああっ! あやしい反応、してた!! 羽花ちゃんだぁぁぁぁ」
「ちょ、うるさっ。いったいなによ!?」
神様、あなたは歯車をうまく噛み合わせてくれるものですね。
ちょうど良いところに、ご本人登場。



