無関心ではなくて、私にも本にも関心を持って接してくれる人がいい。



「そっか」

「水谷くんは?どんな子がいいの?」



正直に答えたんだから、私だって訊いてもいいだろう。


顔を覗き込むようにして訊ねると、少し視線を泳がせた水谷くんは、小さく呼吸をした後「面白い人」と呟いた。



「わりとベタだね」

「王道って言ってもらえると助かる」



まあ確かに小説の中でも、明るくて可愛くて、時々見せる弱さが魅力的なヒロインがいちばんモテるし愛されるしな……。


水谷くんのタイプは面白い子。


なるほど、また一つミステリアスな彼の情報が増えた。



「話してたらあっという間だったね。もう着いちゃった」



駅に入ったところで、タイミングよく電車がやってくる。


長い間電車を待つ必要がないから、とてもラッキーだった。



「今日はありがとう。また明日」

「ああ、気をつけて帰れよ」

「うん。水谷くんもね」



音を立てて扉が閉まる。


軽く片手をあげた水谷くんに、胸の前で小さく手を振った。


まるで恋人のようなその行動がなんだか無性に恥ずかしくなって、くるりと景色に背を向けた私は、薄茶色の床に視線を落としたのだった。