婚約者としての大仕事が終わり、一気に肩の荷が下りた。
同居は半年間の約束のためまだ一緒に暮らしているけれど、最近の颯太はいつも帰りが遅く、夜顔を合わせることが全くない。
帰ってきても書斎で眠っているようで、広いベッドにはいつもひとりきりだ。

パーティーの日以来、颯太は冷たくなった。
朝ほとんど会話がないのは以前と同じだけれど、『行ってきます』というときに、彼は目も合わせず出ていくようになったのだ。
ベッドで眠らないのも私を避けているからなんだろう。
本来これが普通だったのだ。
私たちはただ『取引』で一緒にいるだけなんだし、パーティーが終わったのだから、もう親しく会話をする必要もない。
あの日のキスだって、気にしているのは私のほうだけだ。

いつのまにか金木犀の甘い匂いが香り、深まる秋を告げていた。
10月も残り僅か。同居生活は半分が経とうとしていた。