元彼専務の十年愛

若いがゆえの清さは残酷だ。
軽はずみな口約束と無責任に描かれる未来が、当然叶うものだと信じている。
別れてしまうなら交際記念日なんて何の意味もないのに、『めでたい日』なんて重ねたせいで、毎年誕生日を迎えるたびに嫌でも思い出してしまう。
その上、付き合ってちょうど一年後のあの日、私たちは…
蝕まれるように胸に痛みが広がって、それを振り切ろうと大きく息を吐いた。

『まもなく一番線に——』

大音量のアナウンスが流れ、線路の先から電車が轟音を立ててやってくるのが見えて、スマホをバッグに放り込んだ。
表示板の時計はちょうど0時を指している。
誕生日はもう終わりだ。
否応なしに月日は過ぎ、また新たな『今日』がやってくる。
無理やり気持ちを切り替え、なんとか周囲の流れに溶けながら電車へと乗り込んだ。