その後はショッピング施設で買い出しをと、車をパーキングに停めたまま少し歩くことにした。
天気のいい休日の昼間、歩道は人で溢れている。
颯太の隣を歩いていたけれど、向かいから来る人にぶつからないように道を譲りながら進んでいたら、いつのまにか颯太より一,二歩遅れていた。
「どうした?」
こちらに目を向けた颯太が訝しげに問う。
「ううん、なんでも…人混みってちょっと苦手で」
「上京したてでもないのに。普段こういうところに来ないのか?」
「うん、あんまり。友達と会う時くらいかな」
「そうか。なんだか紗知らしいな。だが、それじゃ前に進めないぞ」
小さく苦笑いをした颯太が、こちらに手を伸ばした時。
颯太のスマホが音を鳴らして、彼は手を引っ込めた。
颯太は複数のスマホを持っているけれど、着信は仕事で使っているもののようだ。
「ごめん、先に行ってて」
「うん」
颯太は歩道の端に寄って電話を取る。
…今、手を引いてくれようとしたんだろうか。
それはやさしさなのか、それとも、帰宅したらまた仕事をするため急いでいるからなのか。
わからないけれど、とにかく電話の内容を聞いてはいけないと思い、先に目的地のほうへと進んだ。
ふと、人通りの多い街中で知った顔の男性が目に飛び込んできた。
ハッとして身を隠そうと思った時にはもう遅かった。
「有沢さん?」
眉根を寄せてこちらにやって来るのは、居酒屋の店長だ。
店の制服ではなく私服姿だから、見慣れなくて気づくのが遅れてしまったのだ。
「こんなところで会うなんてね。文句を言ってやりたいと思ってたんだ」
その表情も低いトーンの声もあからさまに不機嫌さを滲ませていて、身を縮めた。
「急に辞められてこっちはずいぶん迷惑したんだよ。わかってる?」
「すみませんでした」
シフトが入っている当日から急にバイトに行かなくなったんだし、店長や他の店員が迷惑を被ったのは間違いないのだ。
私はただ頭を下げて謝るしかない。
天気のいい休日の昼間、歩道は人で溢れている。
颯太の隣を歩いていたけれど、向かいから来る人にぶつからないように道を譲りながら進んでいたら、いつのまにか颯太より一,二歩遅れていた。
「どうした?」
こちらに目を向けた颯太が訝しげに問う。
「ううん、なんでも…人混みってちょっと苦手で」
「上京したてでもないのに。普段こういうところに来ないのか?」
「うん、あんまり。友達と会う時くらいかな」
「そうか。なんだか紗知らしいな。だが、それじゃ前に進めないぞ」
小さく苦笑いをした颯太が、こちらに手を伸ばした時。
颯太のスマホが音を鳴らして、彼は手を引っ込めた。
颯太は複数のスマホを持っているけれど、着信は仕事で使っているもののようだ。
「ごめん、先に行ってて」
「うん」
颯太は歩道の端に寄って電話を取る。
…今、手を引いてくれようとしたんだろうか。
それはやさしさなのか、それとも、帰宅したらまた仕事をするため急いでいるからなのか。
わからないけれど、とにかく電話の内容を聞いてはいけないと思い、先に目的地のほうへと進んだ。
ふと、人通りの多い街中で知った顔の男性が目に飛び込んできた。
ハッとして身を隠そうと思った時にはもう遅かった。
「有沢さん?」
眉根を寄せてこちらにやって来るのは、居酒屋の店長だ。
店の制服ではなく私服姿だから、見慣れなくて気づくのが遅れてしまったのだ。
「こんなところで会うなんてね。文句を言ってやりたいと思ってたんだ」
その表情も低いトーンの声もあからさまに不機嫌さを滲ませていて、身を縮めた。
「急に辞められてこっちはずいぶん迷惑したんだよ。わかってる?」
「すみませんでした」
シフトが入っている当日から急にバイトに行かなくなったんだし、店長や他の店員が迷惑を被ったのは間違いないのだ。
私はただ頭を下げて謝るしかない。



