元彼専務の十年愛

夕食を食べ終えてフローリングの掃除をしていると、玄関ドアが開く音がした。
時計を見ると21時だ。
遅くなると言っていたけれど、思っていたよりも早い。
お昼の河田さんとの会話のせいか妙に緊張しながら、玄関へ出迎えに行く。

「お帰りなさい」

恐る恐る声をかけると、颯太はこちらを見て小さく笑みを作った。

「ただいま」

土曜の夜と同じ穏やかな声に、ホッとして力が抜けた。
少なくとも、今この瞬間の颯太は冷淡じゃないし、ここで一緒にいるときの彼は非情じゃない。
そう思っていたい。