取引を持ちかけてきた時の颯太は確かに冷淡…というか非情な感じがした。
『ただいま』と『行ってきます』の時の颯太は少し穏やかだったけれど、それ以外の時は表情が薄くて、私にも彼が何を考えているのかよくわからない。
そもそも私は、この10年の彼のことをなにも知らないのだ。
「専務って、この春に就任したんですよね。その前はどこの部署にいたんですか?」
「1年間経営戦略室の室長をしてたのよ。その前はロスの支社にいて、新規事業を軌道に乗せるのに一役買ったんだって。だから重役を選任するとき、役員の満場一致で専務になったらしいわよ」
「ロス…」
またまたついていけず、ただオウム返しをすることしかできない私。
別れたあと転校したのは、会社に入るためにさらに勉強が必要だったからということなんだろう。
けれど、私は颯太がこんな大企業の御曹司だったことも知らなかったし、あんなに突然…
よりによってなんで私たちにとって特別だったあの日に…
食べ進めていた河田さんが訝しげな顔をする。
「食べないの?」
「えっあ…食べます」
慌てて箸をつけ始めたけれど、ご飯は全く味がしなかった。
『ただいま』と『行ってきます』の時の颯太は少し穏やかだったけれど、それ以外の時は表情が薄くて、私にも彼が何を考えているのかよくわからない。
そもそも私は、この10年の彼のことをなにも知らないのだ。
「専務って、この春に就任したんですよね。その前はどこの部署にいたんですか?」
「1年間経営戦略室の室長をしてたのよ。その前はロスの支社にいて、新規事業を軌道に乗せるのに一役買ったんだって。だから重役を選任するとき、役員の満場一致で専務になったらしいわよ」
「ロス…」
またまたついていけず、ただオウム返しをすることしかできない私。
別れたあと転校したのは、会社に入るためにさらに勉強が必要だったからということなんだろう。
けれど、私は颯太がこんな大企業の御曹司だったことも知らなかったし、あんなに突然…
よりによってなんで私たちにとって特別だったあの日に…
食べ進めていた河田さんが訝しげな顔をする。
「食べないの?」
「えっあ…食べます」
慌てて箸をつけ始めたけれど、ご飯は全く味がしなかった。



