元彼専務の十年愛

ランチは河田さんと社食へ行った。
社食と言っても食堂というよりカフェのような造りになっていて、ランチメニューの他に焼きたてパンやデリもある。
それぞれ玄米のご飯とデリの盛り合わせをトレイに乗せ、テーブル席へ座る。

「この前の人違い、残念だったわね。イケメンって噂だから会ってみたいわ」

まさか今一緒に住んでいるなんて言えるわけもなく、空笑いをした。
噂に疎い私は知らなかったけれど、彼はやっぱりイケメンなんて言われているのか。

「すごいわよねえ。イケメンな上に仕事もできるなんて。冷淡って言われてるのが玉に瑕だけど」
「冷淡?」
「喜怒哀楽がないっていうか、感情が全然見えなくて冷たい感じらしいわよ。亡くなった前社長なんか、冷淡を通り越して非道って感じだったけど。孫だから性格が似てるのかもしれないわよね。ま、そこがクールでいいっていうファンの女子社員も多いみたいだけど。イケメンって何かと得よねえ」

ご飯を食べながらくぐもった声で話し続ける河田さん。