隆司先輩が帰って、自室として使わせてもらう部屋で荷物を整理する。
と言っても、私が今まで住んでいた部屋は家具家電が備え付けだったため、ここに持ってきたものは来客用の布団と衣類や本、あとは自分で買った本棚くらいだ。
広い部屋に本棚と布団だけというのは殺風景で、心細い気持ちになる。
フローリングに布団を直に敷いて眠るのは背中が痛くなりそうだけど、たった半年だ。我慢しよう。

ダンボールから取り出した本を本棚に並べながら、一冊に手が止まった。
『The everlasting love』と題されたそれは、私が洋書の魅力に目覚めたお気に入りの一冊だ。
高校の時、この洋書を読んで概要と感想を英語で書くという夏休みの宿題が出され、部活の合間に四苦八苦しながら取り組んでいた。
友人たちはページを分担して訳し、内容を共有していたけれど、私は思いのほかストーリーにハマってしまい、最後までひとりでやり遂げたのだ。
英文の読解力が格段に上がったのはこの宿題のおかげだろう。
以前は何度も読み返していたけれど、本棚の奥にしまったまますっかり忘れていた。
少し色の褪せた表紙を開き、ページを一枚めくる。


——"This is the tale of my extraordinary love, the kind that only comes once in a lifetime."
——"これは、私の生涯一度きりの特別な愛の物語。"


自伝のような書き出しに懐かしさを覚える。
今度また読み返してみようと思いながら、本棚の一番端に入れた。