『ねえ、紗知はあれから恋愛してないよね?先輩のこと、トラウマになってる?』
「トラウマとかじゃないよ。ただ、いい縁に恵まれなかっただけで…」
答えながら息苦しくなっていくのを感じた。
恋愛なんて懲り懲りだと思っていたわけじゃない。
けれど、誰に対しても恋と呼べるほどの熱量は湧かず、恋愛から遠ざかっていたのは事実だ。
そこに颯太の影がよぎっていたのは否定できない。
ひとはそれをトラウマと呼ぶんだろうか。
そんなの、考えたことがなかった。
考えないようにしていたというほうが正しいのかもしれない。
沈黙を挟むと、愛花が空気を変えるように明るい声を出す。
『ごめん、変なこと聞いちゃったね』
「ううん」
しばらく他愛ない会話をして電話を切った。
自分から電話したくせに、消化するどころか何かが胸につっかえたまますっきりしない。
月日は確実に流れていき、それに順応しながら人は変わっていく。
愛花も、隆司先輩も、颯太だって同じだ。
それなのに…
私だけが、いまだあの日々に取り残されたまま。
「トラウマとかじゃないよ。ただ、いい縁に恵まれなかっただけで…」
答えながら息苦しくなっていくのを感じた。
恋愛なんて懲り懲りだと思っていたわけじゃない。
けれど、誰に対しても恋と呼べるほどの熱量は湧かず、恋愛から遠ざかっていたのは事実だ。
そこに颯太の影がよぎっていたのは否定できない。
ひとはそれをトラウマと呼ぶんだろうか。
そんなの、考えたことがなかった。
考えないようにしていたというほうが正しいのかもしれない。
沈黙を挟むと、愛花が空気を変えるように明るい声を出す。
『ごめん、変なこと聞いちゃったね』
「ううん」
しばらく他愛ない会話をして電話を切った。
自分から電話したくせに、消化するどころか何かが胸につっかえたまますっきりしない。
月日は確実に流れていき、それに順応しながら人は変わっていく。
愛花も、隆司先輩も、颯太だって同じだ。
それなのに…
私だけが、いまだあの日々に取り残されたまま。



