元彼専務の十年愛

「隆司先輩?」
「正解。久しぶり、有沢」

彼は歯を見せて笑いながら大きくうなづいた。
佐藤隆司先輩。
彼は高校を卒業後、都内の有名私立大学に入学し、その後は大手IT企業に就職したと聞いた。
ALPHAとは業種が違うはずなんだけれど…

「先輩、ここで秘書をされてるんですか?」
「うん、その辺も含めて説明するよ」

隆司先輩は「こちらへ」と先ほどの応接室へ促す。
ソファに向かい合って座り、彼は軽く身を乗り出して再び気さくな笑みを向ける。

「驚いたでしょ。まさかド田舎で育った3人がこんなところでまた会うとはね」
「はい。隆司先輩は彼と幼なじみなんでしたよね。でも、彼は二学期から転校して連絡が取れなくなったって…」

学年が違い、ましてやすでに別れていた私に事情はわからない。
ただ、東京の学校に転校し、音信不通になったという噂を聞いた。

「スマホが壊れてアドレスが消えちゃったんだってさ。俺も、去年颯太が俺の実家を訪ねてきてアドレスを聞くまでずっと疎遠だったんだよ」

スマホが壊れた…
転校したタイミングでそんなことになれば、確かに連絡を取りようがないだろう。