元彼専務の十年愛

「マネージャーの仮入部に来た1年生?」
「はい」

あたふたして言葉が出てこない私の隣で、愛花が答えた。

「俺、2年の高瀬。サカマネって忙しいんだけど、嫌じゃなかったらまた見に来て」
「はい、また来ます」

愛花がはつらつと答えると、彼は微笑み、茶色い瞳が長い睫毛で隠れた。
部員の輪の中に戻っていく背中を見ながら、愛花が私の耳元に顔を寄せる。

「近くで見るとホントにすごいイケメンだねえ」
「う、うん…」
「何?一目惚れしちゃった?」
「そ、そういうんじゃないよっ」
「ふうん」

愛花はいじわるに横目で見たけれど、私は男子と話すこと自体に慣れていないため、ただでさえ周囲と違うオーラを放つ彼に話しかけられてパニックに陥ってしまったのだ。

「私、このまま入部するよ。紗知も入ろうよ」
「え、うん…」
「やったっ」

流されやすい私は、積極的な愛花に引っ張られる形で、あっさりと入部が決まった。