彼と後味の悪い別れ方をしたのは確かなのだ。
けれど、一緒に過ごした一年間の思い出は決して私を苛むばかりではなかった。
切なくも、時に懐かしさと癒しをくれていたのだ。
それを土足で踏みにじられ、黒く塗りつぶされていく。
やめて、と心が弱々しく声を上げるけれど、それが怒りなのか悲しみなのかわからない。
私はきっと、付き合っていた頃のやさしい彼を美化しすぎている。
別れた時に彼はすでに私の知っている彼ではなくなっていたのだから、今さらこんなことにショックを受けるのが愚かなのだ。
ぎゅっと目を閉じて浮かびかけた涙を閉じ込め、立ち上がって声を絞り出す。
「私には関係ありません。ほかを当たってくだ——」
「この会社が兼業禁止なのは知ってるよな」
強い口調で遮られ、肩が跳ねた。
「父親が急死して借金が残っている。返済のために居酒屋でバイトか」
「…調べたんですか」
自営業をしていた父が負債を抱えたまま急死したのは3か月前のことだ。
タチの悪い消費者金融からも借り入れをしていて、それを返すために家の蓄えはなくなった。
借金はまだ山ほど残っているし、今まで専業主婦をしていた母がパートに出て稼げる金額も多くはない。
やむなくアルバイトを始めたけれど、こんなにすぐに兼業がバレるなんて思わなかった。
けれど、一緒に過ごした一年間の思い出は決して私を苛むばかりではなかった。
切なくも、時に懐かしさと癒しをくれていたのだ。
それを土足で踏みにじられ、黒く塗りつぶされていく。
やめて、と心が弱々しく声を上げるけれど、それが怒りなのか悲しみなのかわからない。
私はきっと、付き合っていた頃のやさしい彼を美化しすぎている。
別れた時に彼はすでに私の知っている彼ではなくなっていたのだから、今さらこんなことにショックを受けるのが愚かなのだ。
ぎゅっと目を閉じて浮かびかけた涙を閉じ込め、立ち上がって声を絞り出す。
「私には関係ありません。ほかを当たってくだ——」
「この会社が兼業禁止なのは知ってるよな」
強い口調で遮られ、肩が跳ねた。
「父親が急死して借金が残っている。返済のために居酒屋でバイトか」
「…調べたんですか」
自営業をしていた父が負債を抱えたまま急死したのは3か月前のことだ。
タチの悪い消費者金融からも借り入れをしていて、それを返すために家の蓄えはなくなった。
借金はまだ山ほど残っているし、今まで専業主婦をしていた母がパートに出て稼げる金額も多くはない。
やむなくアルバイトを始めたけれど、こんなにすぐに兼業がバレるなんて思わなかった。



