「俺は『神代』じゃありません。この会社の都合なんて関係ありません」
「そう言われるのはわかっていたが、社長にお前の存在がバレてしまった以上、関係ないじゃ済まされないんだ。本当に申し訳ないと思っている」

父は頭を抱えながら俯いた。
俺の母と父は、祖父によって強制的に別れさせられたらしい。
けれどその時母のお腹には俺がいて、父はそれを知っていた。
会わずともふたりは時折連絡を取り、母は成長していく俺の写真を父に送っていたそうだ。
父は政略結婚した妻との間には子どもに恵まれず、妻は病気で数年前に亡くなったという。
祖父がなんとか血縁を残したいと画策していた時、俺の母が亡くなった。
母との共通の知人から父に連絡がいき、葬儀へ出るため父が不審な動きをしたことで、祖父に俺の存在がバレた。
祖父は当然俺を跡取りにしたがったのだ。