「すまない、颯太。お前の祖父の…社長の意向なんだ。神代の血筋を途絶えさせたくないと」

都会の一等地にそびえ立つオフィスビルの最上階。
いかにも高級そうなソファに腰かけ、向かい合った俺の父親を名乗る人が、深刻な表情を浮かべた。

母が倒れたのは、夏休みに入ったばかりのある夜だった。
救急車が到着したときにはすでに遅く、突然の心臓の病で帰らぬ人となっていた。
そこから先はあまり記憶がない。
気づいたらここに連れて来られていた。
祖父母は俺が幼いころに亡くなっているため、俺にとって家族はもう母だけのはずだった。
それなのに、今目の前には俺と同じブラウンの瞳を持つ父親がいる。
この人はこの大きな会社の副社長で、そして俺の祖父は社長なのだという。