仕事の内容はちゃんと頭に入っていた。
会社の経営を管理する立場として、数字を把握するのは大事なことだ。
数字、数字、数字。その羅列を見ながら分析を重ねる。
それを見落としたり、誤った解釈をしてしまうわけにはいかない。
常に集中していなければならないのだ。
集中力を保つことには自信がある。
過酷な日々の中で自然と培われていったものなのだろう。
けれど、今日に限っては気を抜けばすぐに集中力が途切れそうだったため、それを振り切るために必死だった。
そうでないと否応なしに彼女のことを思い出してしまうから。
俺はまた仕事に没頭し、会社のために生きていく。
そのために、この気持ちを早く消さなければならないのだ。